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新穂高ロープウェイに人気が集中する新穂高温泉では、槍穂高連峰や笠ヶ岳・双六岳方面へ向う登山コースに一歩入ると、とたんに観光客の姿を見なくなります。
しかし、新穂高から林道を歩いてゆく穂高平やわさび平は、山々を間近に眺める手ごろなハイキングコースながら、まだ登山道の通過点くらいにしか思われていません。
静かで自然をたっぷり楽しめる穴場として、わさび平を紹介します。
新穂高温泉→わさび平 約1時間/わさび平→新穂高温泉 約50分 |
新穂高ロープウェイ駅の手前、新穂高温泉バスターミナルの背後にはのびやかなスカイラインを描く笠ヶ岳がそびえています。橋を渡り、左俣谷沿いに林道を進みます。森林管理署とロッジニューホタカのあたりからは、樹林越しに奥穂高岳のジャンダルムが見えています。
車止めのゲートを抜け、急な傾斜の林道を歩くと、正面が大きく開けて、大岩壁を広げた笠ヶ岳の全容が現れます。壮絶な崩壊を見せる穴毛谷には延々と砂防ダムが続き、自然の脅威に驚かされます。
大正9年に起きた穴毛谷土砂崩れは下流の蒲田温泉を埋め尽くし、戦後まで復興できませんでした。そのため、飛騨側の北アルプス観光は信州に比べて大きく遅れを取りました。最近では2000年(平成12年)に砂防工事現場を雪崩が襲い、作業員が2名が生き埋めになる史上最大規模の雪崩が起きています。
穴毛谷は笠ヶ岳への歴史的登山ルートでしたが、崩壊が激しく、現在では一般登山者が通行できる場所ではありません。
穴毛谷出合を過ぎ、水量の豊富な左俣谷を眺めながら林道を進みます。
橋を渡り、発電所の取水口を過ぎるとぽつぽつとブナの巨木が現れ出し、看板と水場のある笠新道の分岐に到着します。笠ヶ岳へのメインルートであり、杓子平カールと抜戸岳の稜線まで標高差1400mを一気に突き上げる笠新道は北アルプス有数の急坂で知られています。
さらに林道を進みます。大きく開けた広場を過ぎ、前方に見事なブナ林が広がると、笠新道分岐から約10分でわさび平小屋に到着です。小川が流れる明るいブナ林に囲まれた静かな山小屋です。
ここまで来たなら、もう少し足を伸ばしてみましょう。林道を進み、10分ほどでブナ林を抜けると、前方が大きく開けて抜戸岳から弓折岳へのパノラマが展開します。
左俣谷にかかる橋が終点、ここから先は本格的な登山道になります。
標高は約1400mと低いものの、冬は北アルプスで発生する雪崩のため背の高い樹木が育つことができず、草原の大斜面が広がるアルペン的な雰囲気が味わえます。
東に小高い中崎尾根が伸び、こんもりした奥丸山とおにぎり形の小丸山が見えていますが、こちらは雪崩の影響を受けないので森林に覆われていて対照的な風景になっています。
わさび平小屋 7月〜10月 電話:(0577)34−6268
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