10月中旬から11月下旬にかけて、標高の高い場所から順々に紅葉が始まり、下呂の山々を彩ります。
温泉寺境内ではライトアップが行われ、特設足湯に浸かりながら、紅葉と温泉街の夜景を楽しむことができます。イベントも数多く開かれ、飛騨川沿いの河川公園で行われる下呂温泉謝肉祭、市内あちこちで開催される収穫祭や農林水産業祭など、実りの秋を満喫できます。
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下呂温泉に秋の訪れを告げるのが「タカの渡り」です。
夏から秋にかけて、日本の北方で繁殖した夏鳥は、秋になると南の国へ移動を始めます。「タカの渡り」は、タカが南へ向かって渡ってゆく様子のことです。
下呂温泉の東に連なる下呂御前山の稜線にある「観音峠」では、この渡りを見ることができます。
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小型のタカの仲間に「ハチクマ」というタカがいます。このタカの渡りルートは、信州から野麦峠を経て御嶽山麓から観音峠を越え、岐阜市の金華山まで一気に飛行します。
9月下旬から10月はじめの午後2時〜4時くらいにかけて、観音峠一帯では、タカの集団が柱のようになって渡る「タカ柱」も観察できます。淡い夕方の空を、黒い柱のように縦断する様子を見るため、愛鳥家たちが集まってきます。また、地元の専門家による一般向け観察会も開かれます。
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観音峠を越えて渡っていく生き物は鳥類に限らず、日本全国に生息するアサギマダラという大型のチョウが渡り鳥のように季節で移動することが知られています。ここ観音峠もチョウの渡りのルートで、秋には北から南へ向かって飛んでいきます。
ただし、群れで飛ぶのでなく、ひらひらと個体で移動するので、あまり目立つものではありません。 それでも、観音峠で捕獲され、マーキングされたチョウが、高知県で発見され、さらに同じ個体がはるか奄美大島で再び発見されて研究者を驚かせました。 |
下呂温泉の南に続く飛騨川の渓谷を中山七里といいます。 豊臣秀吉の武将・金森長近は、5つもの峠を越える旧道が不便なことから、険しい飛騨川沿いの難所を切り開いて新たに飛騨街道を開通させ、中山七里と名づけました。
飛騨木曽川国定公園に指定された景勝地で、南の金山町から北の帯雲橋まで28kmにわたって、白い岩肌の奇岩怪石とエメラルドグリーンの水に紅葉の赤や黄色が映える美しいコントラストをつくっています。 南から牙岩、孝子池、羅漢岩、屏風岩などの名所があり、飛騨川に並行してJR高山本線と国道41号線があるので、車窓から紅葉が楽しめます。
竹原川の支流、輪川に沿って峠を越えた門和佐地区で上演される地歌舞伎です。 明治23年創建の白雲座のコマ回し舞台は国の有形民俗文化財、2階建て400人収容の芝居小屋は国指定重要文化財に指定されています。
ふだんは静かな山里も、毎年11月2日、3日の白山神社祭礼に合わせた地歌舞伎で大賑わいです。
地歌舞伎は2日間にわたり、昼頃から夜10時近くまでのかなりの長丁場で行われます。役者は子どもから大ベテランまで、すべて地元の人。素朴ながら数ヶ月間をかけて練習に取り組んできた演技は玄人はだし。
家族や友人の出演を見るため、開けっ放しの正面入口はひっきりなしに客が出入りします。桟敷席では芝居を見ながら飲んだり、食べたり。舞台めがけて笑い声やかけ声が飛び交い、どこか落ち着きのないがやがやした感じが地域密着の味わいです。もちろん、遠来の人も大歓迎されます。
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