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乗鞍岳に数ある登山コースのうち、一番人気は畳平から剣ヶ峰への往復登山です。
起点の畳平で標高2702m、ほとんど北アルプス山頂と同じ標高までシャトルバスで上り、最高峰の剣ヶ峰まで高低差はわずか300m。北アルプスで最も容易に山頂を踏むことができます。
しかし、畳平周辺の火口丘ピーク散策は別にして、剣ヶ峰は標高3000mを越す高山です。行程は短くても、準備や天候判断には万全を期してください。 悪天候や雷雲が近づいている時などは、登山を見合わせましょう。
畳平→肩の小屋 約40分/肩の小屋→畳平 約30分 |
畳平でシャトルバスを下り、天候が安定しているなら、トイレを済ませて出発します。
畳平から剣ヶ峰へ向かう道は、鶴ヶ池を巻いて富士見岳中腹に作られた作業用車道の砂利道を進むコースと、バスターミナル脇から階段でお花畑に下り、土道の階段で不消池の近くに出て前記の作業道に合流するコースがあります。 行きと帰りで使い分けてもいいでしょう。
ここではお花畑コースをとります。7月中旬から8月中旬にかけては、色とりどりの高山植物であふれる北アルプス最大級のお花畑です。メインは一周約30分の木道が敷かれた平坦地ですが、そこへ下りるコンクリート階段の周囲にも高山植物が豊富に見られます。
木道との分岐を過ぎると、登山道らしい土道になります。不消池の雪渓が近づくと、急な階段で富士見岳中腹をトラバースする幅の広い作業道へ飛び出します。
この辺りは富士見岳、摩利支天岳、不動岳に囲まれ、畳平へ向けて口を開いた火口跡です。吹き溜まった大量の雪が削り出した氷食湖・不消池があり、その名のとおり夏の遅くまで湖面を雪渓が覆っています。不消池の周囲は乗鞍岳有数のお花畑ですが、畳平の水源地でもあり、立ち入り禁止になっています。
摩利支天山頂にあるコロナ観測所への作業車道が右へ分岐する地点へくると、目の前がぱっと開けて、剣ヶ峰、蚕玉岳、朝日岳の3ピークが峰を連ねる乗鞍岳主峰が姿を現します。足元の眺めも大きく開け、乗鞍高原へ裾野を広げる位ヶ原のハイマツの大斜面が展開します。エコーラインのバス道路が蛇行する位ヶ原には、夏の遅くまで残る大雪渓があり、夏スキーを楽しむスキーヤーの姿が小さく見えています。
摩利支天岳の中腹を巻くと、乗鞍岳主峰との中間に広がる室堂ヶ原に到着します。
山小屋スタイルの肩の小屋が営業しており、小屋の前は剣ヶ峰をあおぐ広いテラスになっています。ここからが正念場なので、休憩しながらコンディションを整えましょう。
また、ここから先にはトイレがありません。
肩の小屋→剣ヶ峰 約50分/剣ヶ峰→肩の小屋 約40分 |
肩の小屋と宇宙線観測所の間を抜けて乗鞍岳主峰へ取り掛かります。登山道は今までの平坦な砂利道から、足を踏ん張るとザラザラと崩れる火山灰と溶岩交じりの急斜面になります。
滑りやすいので、特に下るときや行き交う登山者が多いときには注意が必要です。
ひとのぼりで蚕玉岳と朝日岳の鞍部にたどり着きます。足元には乗鞍岳主峰の火山壁が取り囲んだ権現池が青い湖面を見せ、池の淵を雪渓が飾っています。南の御嶽山にある二の池に次いで日本第二位の標高を誇る高山湖です。
振り返ると、室堂ヶ原に先ほどの肩の小屋が小さく見え、その上に摩利支天山頂にあるコロナ観測所のドームが太陽光を反射して白く光っています。乗鞍岳の山々の向こうには、大きく笠ヶ岳から槍ヶ岳、穂高連峰に至る北アルプスの名峰群が大パノラマを展開しています。
蚕玉岳の山頂を通り、剣ヶ峰への急な登りにかかりますが、石垣に囲まれた頂上小屋(売店のみ営業)を過ぎると、あっけなく3026mの剣ヶ峰山頂に到着します。
さほど広くない山頂には、信州側の朝日大権現と、飛騨側の乗鞍本宮が背中合わせで建っています。
南に雄大な裾野を広げる御嶽山や、東南の中央・南アルプス、富士山、東の八ヶ岳、北方の北アルプスの峰々、西に高山市街と青く山波を重ねる飛騨高原越しの優美な白山、晴れていれば360°文句なしの大展望が楽しめます。
シーズン中は、どんどん人が上ってくるので、狭い頂上はごったがえします。展望を堪能したら剣ヶ峰から一段下り、蚕玉岳辺りで休憩を取りましょう。帰りは来た道を戻ります。不消池からお花畑に下りず道なりに行くと、鶴ヶ池畔に出ます。路傍のコマクサなどを楽しみながらバスターミナルへ戻ります。
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