Panorama飛騨 飛騨路と北アルプスの絶景地ガイド

 
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乗鞍岳平湯道トレッキング


 平湯温泉から平湯大滝を経て谷沿いに遡る道は、明治時代にウォルター・ウェストンが乗鞍岳登頂に使った歴史あるルートでした。しかし、猿飛八丁の険と呼ばれる難所が崩壊して通行不可能になったため、クラシックルートは閉鎖され、平湯温泉スキー場から尾根ぞいに上り乗鞍スカイラインに合流する新登山道が開拓されました。


 北は槍ヶ岳や穂高連峰のパノラマ、南はあまり馴染みのない角度から乗鞍岳の巨大な山容を眺める好展望と、姫ヶ原の高山植物のお花畑が魅力的ですが、平湯温泉からスカイライン合流点までの距離は9.6km、標高差1400mと健脚向きです。
 そこで、乗鞍山頂畳平にバスで上がり、十石尾根の乗鞍権現までを往復するルートでご紹介します。

畳平から乗鞍権現へ

畳平→登山口/0:40 登山口→畳平/0:45

 乗鞍畳平バスターミナルでバスを降り、ほとんどの人がお花畑や山頂方面に向かうなか、反対方向の桔梗ヶ原に向けて歩き出します。
 右に鶴ヶ池、左に山小屋の白雲荘を見ながらスカイラインのバス道を進み、大黒岳の山腹をトラバース気味に歩きます。左手は鶴ヶ池から流れて大丹生池に流れ込む谷で6月まで大きな雪渓が残って春スキーのゲレンデになる場所です。


 広大な桔梗ヶ原の台地に入り、約2kmの舗装道路を淡々と歩きます。マイカー規制後は通行する車両も少なく、安心して歩くことができますし、槍・穂高連峰の大パノラマが広がるハイマツ樹海の下にはところどころ高山植物のお花畑もあって、畳平では見られない花も見ることができます。
 烏帽子岳のピラミッドに向かって進み、スカイラインが大きく下っていく大丹生岳カーブまで来ると、車道端のガードレールの切れ目に「平湯十石山登山口」の道標が立っています。平湯温泉まで9.6kmとあります。

登山口→乗鞍権現/2:00  乗鞍権現→登山口/2:00

 足元はザラザラで、スカイラインから九十九折りの下り道を一気に標高差150mの急降下です。下りきった鞍部から乗鞍岳を振り返ると、ハイマツに覆われた巨大な山容が広がり、バス登山では分からない乗鞍岳の大きさを実感することができます。
この鞍部には円錐形の小山があって、コマクサの大群落で足の踏み場がないほど咲いていますが、決して踏み荒らさないようにそっと通過します。
 分岐の標識が現れる姫ヶ原は、旧平湯登山道の途中にある窪地のお花畑です。
雨の多い時期には池になりますが、乗鞍岳でも一二を争う高山植物の宝庫です。旧登山道の閉鎖後はお花畑への道もロープ規制され、訪れることはできないようです。


 姫ヶ原分岐から硫黄岳に向け、十石山尾根のハイマツ樹海をゆるやかに登ります。
 足元には湯川谷の源流があり、湯川源泉の湧出地が白い山肌を見せています。ここから引湯された温泉が乗鞍高原温泉です。振り返ると、はるか稜線近くの高みに乗鞍スカイラインのヘアピンカーブがあり、ときおり登山バスが通ると太陽を反射してキラリと光って見えます。


 硫黄岳の山頂下を飛騨側にトラバースすると、行く手には右手に槍穂高連峰、中央に焼岳のドーム、左に笠ヶ岳が大きく稜線を延ばす大パノラマが広がって圧巻です。それらの山々に囲まれた飛騨の谷間には平湯温泉街が見えています。
 同じ乗鞍岳でも、剣ヶ峰ではやや距離が遠くなるため、北アルプスの迫力あるパノラマを眺めるには最高のルートだといえます。


 ゆるい尾根道を下りぎみに縦走していくと、目の前の金山岩岳との鞍部に向けて急な下り道があって、ハイマツ樹海からダケカンバ林や笹原へと植生が変化し始めます。
風雪に耐えた背の低い樹木に、草原には高層湿原の池塘もいくつか見られて、自然の庭園ともいえる気持ちの良い風景です。


 遠くから見えていたガレ地が次第に近づき、足元が崩れ落ちた斜面を2ヶ所ほど慎重に乗り越えます。ガレ場を越えると湿った小さな谷間に突入し、ぬかるんだ道を登り返せば、平湯温泉の人たちによって新しい祠が祀られた乗鞍権現に到着します。


 十石山分岐の道標がありますが、金山岩を経て十石山に至る尾根道は崩壊しているため、一般登山者の縦走はたいへん危険です。平湯へは6.3kmです。乗鞍権現の小広場からは乗鞍岳の山容が南東方向から眺めることができます。
 帰りは来た道を引き返します。




乗鞍権現から平湯温泉へ

乗鞍権現→平湯 3時間 / 平湯→乗鞍権現 4時間

 北アルプスのパノラマ展望地としては最後の乗鞍権現から、樹林帯のなかを急降下していきます。2005年の新登山道開設以来、まだまだ道が踏み固められていないため、足元はぬかるんで浮石もあり、なかなか難儀するところです。
 激下りの途中にある分岐から脇に入ると、針葉樹林に囲まれた白猿の池がひっそりとたたずみ、長い行程の疲れを癒してくれます。さらに展望のない森林尾根を急降下していくと、視界が開けて平湯スキー場の旧上部ゲレンデのススキ原に到着します。

 やれやれ一息、といった感じですが、実はここから平湯温泉までの3.3kmのスキー場歩きが実に大変です。平湯スキー場は閉鎖されている上部ゲレンデと、国道158号線に面したファミリーゲレンデをつなぐ中間部が急峻な壁になっており、細かな砕石を踏みながら夏草が生い茂る急坂を下るのは非常に辛いものがあります。
 迂回コースとして利用された林道を進む方がまだましですが、こちらも辛い山下りになります。林道を下りきるとファミリーゲレンデに到着し、平湯大滝公園への入口にあたるスキー場売店の脇に出ます。ここから平湯バスターミナルまで約1kmです。


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