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横尾から6km、穂高連峰の懐に抱かれた涸沢は奥穂高岳、北穂高岳への登山のベース。ここまで来るとハイキングのエリアではなく、本格的な登山者の領域です。
しかし、深いカールの底から岩と雪の殿堂を見上げる素晴らしさは、上高地バスターミナルから延々7時間近く歩き続けて来た者だけが見ることができる絶景です。 岩登りに自信がない人でも、涸沢までなら大丈夫です。
横尾→涸沢 約3時間30分/涸沢→横尾 約2時間30分 |
横尾は槍ヶ岳方面に向かう登山道と穂高岳方面に向かう登山道の分岐点、ここから先は本格的な装備を持った登山者の世界です。たとえ穂高岳に登らず、涸沢トレッキングが目的にしても、十分な装備と時間の余裕を持ちましょう。
1泊2日のトレッキングになります。
立派な横尾大橋を渡って梓川の対岸に出、横尾までとは変わって本格的な登山道をたどります。河原から樹林帯の岩交じりの急坂を登って水平道になると、頭上に迫る屏風岩を見上げながらのゆるやかな山道が続きます。
巨大な屏風岩をぐるりと回りこんだ頃、足元の本谷に下りて行き、簡易な本谷橋で対岸へ渡ります。明るく開けた本谷橋は涸沢への中間点、休憩によいところです。
上方に見上げる稜線は北穂高岳ではなく南岳、大キレットの下にあたる本谷と分かれて、支流の涸沢沿いにさかのぼります。
樹林帯のジグザグ道を急登し、やがて北穂高岳の岩峰がその雄姿を見せる頃、前方はるかに涸沢ヒュッテの吹流しが見えてきます。涸沢ヒュッテは氷河の堆積丘モレーンに建っていますが、石垣に囲まれて要塞のような趣です。
見えているのになかなか近づいてきないので焦りますが、ゆっくり行くと涸沢ヒュッテと涸沢小屋の分岐に到着します。 この辺りはキャンプ指定地で、色とりどりのテントが張られています。
涸沢→穂高岳山荘 約2時間20分/穂高岳山荘→涸沢 約1時間30分 |
涸沢カールから穂高岳山荘までほぼ一直線に直登する尾根をザイテングラードといいます。涸沢キャンプ指定地を過ぎて、涸沢ヒュッテと涸沢小屋の道が合流すると、石ばかりのカール斜面をせり上がり、カールの全容を見渡せる場所から、するどい涸沢槍の下をトラバースしてザイテングラードの尾根に取り付きます。
ザイテングラードまでがゆるやかそうに見えて、その実、石でガラガラした斜面のなかなか急な登りを強いられるため、辛いところですががまんします。ザイテングラードの下部は小広場になっていて、下に涸沢カール、上に穂高連峰の稜線を眺める素晴らしい休憩ポイントです。
ザイテングラードはハシゴもある急な岩尾根ですが、道はしっかりしていて危険な場所はありません。たしかに急ですが、小気味良くさくさくと登っていけます。やがて頭上に穂高岳山荘前のテラスで休む人の姿が見えてくると、あと少し。
小さなトラバースで穂高岳山荘に飛び出ます。
穂高岳山荘→奥穂高岳 約40分/奥穂高岳→穂高岳山荘 約30分 |
穂高岳山荘の脇から、ハシゴで奥穂高岳の頂上へ続く稜線へ出ます。
のっけから見上げるような岩場を長いハシゴを継いで登るので不安が募りますが、危険なポイントはここだけなので、慎重に上りきります。
あとは岩尾根を順調に高度を稼いでいきます。稜線は切り立っていますが、もうテクニックを要求される悪場はありません。
奇怪なジャンダルムの岩峰を前方に眺めながら行くと、ひときわ高い岩の上にケルンが積まれた奥穂高岳(3190m)の頂上です。はるか上高地を見下ろしながら、日本第3位の高さからの景色が楽しめます。
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