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穂高連峰を最も間近にあおぐ河童橋は上高地の象徴ともいえる場所で、いつでもカメラを構えた観光客で賑わっていて、一瞬ここが北アルプスの真ん中であることを忘れてしまうほどです。でも、河童橋の東詰め、五千尺ホテル前から一歩奥へ踏み込むと、河童橋の喧騒がうそのように静かなカラマツ林が広がっています。
驚くほど透明な水が滑るように流れる清水川の橋を越えると、上高地のキャンプエリアである小梨平です。トイレ棟が点在しているので、ここで済ませておきましょう。観光施設としては清水川畔に上高地ビジターセンターがあります。
小梨平キャンプエリアを過ぎると観光客の姿もなく、ウォーキングの格好をしたハイカーや登山者の世界です。
熊笹の下生えのある森の中に、歩きやすい砂地の地道が続いています。梓川の流れから離れ、緩やかな起伏をいくつか超えてゆくと、沢から押し出された白い砂が堆積した場所に出ます。視界が開け、梓川越しの頭上高く明神岳の岩峰が天を突いてそびえているのが見えます。
砂山を過ぎて再び針葉樹林に入ると、次は目の前に広い河原に蛇行する梓川の風景が開けます。河原の白い石が太陽を反射してまぶしいくらいです。目標の明神の吊橋も見え、あと少しで到着です。
平坦地になって穂高神社奥宮の碑が立つ広場に出ると、明神に到着です。明神岳をあおぐ樹林の中に、明神館とやまのひだ屋の2軒の山荘があります。
徳沢へ続くメインルートと分かれて梓川方面へ行くと、明神吊橋で梓川を渡ります。
対岸には吉城屋山荘と嘉門治小屋があり、その奥に穂高神社奥宮の明神池が神秘的な湖面を見せています。穂高神社は池自体がご神体になっています。
明神池は明神岳の岩峰から流出する土砂が梓川の支流を塞き止めてできた池で、流入する谷はなく、池底から湧水が絶えず湧き出しています。そのため驚くほどの透明度を保っています。
大きい池が一の池で、穂高神社の祭礼の場となり、隣接する小さな二の池は、湖面に浮島が多く、天然の日本庭園のような趣があります。
明神池:拝観料が必要
明神池から河童橋まで、穂高岳の山すそを巻くように歩く道があります。小梨平を経由するメインルートと併せて行きと帰りでコースを変えてみるのも面白いでしょう。
梓川右岸歩道は、木道の設けられた湿原の中を渓流が縦横に走り、梓川の流れを見下ろし、霞沢岳の姿を眺める変化に富んだ眺めが魅力です。
起伏が大きく、距離が多少長いのでそんなに歩かれてはいませんが、野性味にあふれた上高地の別の面を発見できるいいコースです。
明神池から河童橋に向けて歩きはじめます。道は梓川に合流する支流に沿い、樹林帯に囲まれた湿原に小さな流れが走る気持ちのいい場所を木道で渡ります。
湿原を過ぎると、深い針葉樹林の山の中腹を木道や地道で上り下りしながら進んでいきます。眺めはありませんが、梓川を見下ろす場所もあり、気持ちのいい道です。
大きく回りこむと岳沢分岐の標識があり、前穂高岳への登山道が分岐します。
この辺りは岳沢湿原と呼ばれ、前穂高岳から流れる岳沢が広い池や湿原を作り、立ち枯れの木の向こうに六百山がそびえる絶景地です。再び針葉樹林に分け入り、サルの群れが多い場所を過ぎるとふいに人通りが多くなって白樺ホテルの前に出ます。
ついさっきまでの静けさがうそのような、河童橋の喧騒がそこにあります。
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