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飛騨と信州の境にそびえる御嶽山には、飛騨から濁河口、日和田口の2コース、信州から王滝口、黒沢口、開田口の3コースの登山道があります。
このうち、チャオスノーリゾートのゴンドラ夏運転をやめた日和田口と、昔ながらの雰囲気を残す開田口は道のりが長く、標高差も大きいため一般的ではありません。
御嶽教の信仰登山は信州側の王滝口、黒沢口を中心として発展し、シーズン中は白装束の講登山や一般登山者で賑わいます。いずれも標高2000m超の場所まで自動車道やロープウェイが整備されているため日帰りも可能で、3000m級の高山としては容易に山頂に立てます。
俗化しているとも言われる御嶽山ですが、メインルートから一歩奥に入れば、日本一のボリュームを誇る巨大な山塊だけに、手付かずの大自然を味わうこともできます。
標高2180mの田の原自然公園まで車を利用して上がれる王滝口から、剣ヶ峰までダイレクトに直登するルートをご紹介します。
田の原→王滝頂上 約2時間30分/王滝頂上→田の原 約1時間30分 |
田の原観光センターがある登山口には、収容台数100台の大駐車場があって、よほどのことがない限り満車になる心配はありません。田の原からは、目の前にどーんと御嶽山の雄姿がそびえ、登山意欲が湧いてきます。道中にはトイレがないため、田の原で済ませて出発しましょう。
鳥居をくぐって広い砂利敷きの参道を行きます。平坦な田の原湿原に伸びる直線の参道は600mほどで終わり、御嶽遥拝所の大きな神社があって、シーズン中は白装束の御嶽教信者の団体が熱心に祈りを捧げています。
遥拝所から本格的な登山道が始まります。樹林帯に入って急な坂道をぐいぐい登ると、大江権現の社を経て、あかっぱげと呼ばれる赤土の露出したザレ場を過ぎます。あとひと登りで森林限界を超え、8合目金剛童子に到着します。
社や霊神碑が建つ金剛童子から来た道を振り返ると、田の原の高原駐車場に止まった車が太陽を反射してきらきら光って見えます。背後には中央アルプスの山並みが屏風のように連なり、谷間から涼しい風が吹き上げて爽快な場所です。
ただし、ここからは頭上高くに王滝頂上の山小屋が見えますが、息もつかさぬ急登の連続になります。晴れた午前中は、頭の後ろに太陽光を浴びるので辛いですが、がまんのしどころです。熱射病防止のために帽子は必須です。
やがて、中央アルプスと南アルプス越しに富士山が見えだす富士見石を通り、9合目の一口水に出ます。湧水の上部には夏の遅くまで雪渓があって水源になりますが、年によって流れていないこともあります。
9合目避難小屋を過ぎて溶岩がごろごろする道を九十九折に登って行きます。
だんだん山小屋が大きく見えるようになり、最後の急坂をぐいっと上がれば、王滝頂上山荘の前を抜けて、平坦になった王滝頂上2936mに到着します。
王滝頂上→剣ヶ峰 約30分/剣ヶ峰→王滝頂上 約20分 |
頂上に立派な神社が祀られた王滝頂上からは、草木ひとつ生えていない荒涼とした火口地帯越しに、御嶽山剣ヶ峰を望みます。2つの峰を結ぶ広い尾根を八丁だるみといい、奇妙な宗教オブジェがあって目を引きますが、ここは地獄谷の火山性ガスが噴出する危険地帯でもあります。登山道のすぐ脇には立ち入り禁止エリアが設けられており、風向きによっては気分が悪くなることがあるので、長居しないように通り抜けます。
最後に頂上山荘から階段をひと登りで、360度の大パノラマが広がる御嶽山剣ヶ峰の頂上に到着します。
剣ヶ峰の帰りには、時間の余裕があれば王滝頂上から尾根伝いにある奥ノ院を訪ねると、変わった角度から御嶽山を眺められるいい機会になります。
やせた岩尾根を、王滝側にトラバースしながら進みます。地獄谷側と違い、足元に高山植物のお花畑が広がる楽しい道で、あまり花に恵まれない王滝口登山道の別天地のような場所です。やがて、日の門、月の門といった奇岩を過ぎると、尾根の突端に祀られた奥ノ院があります。
奥ノ院の社からは、足元がすっぱり切れ落ちた地獄谷の壮絶な噴火口が眺められ、ジェット機のようなゴーゴーという轟音を轟かせて火山ガスが吹き上げる様子を間近に見ることができます。
王滝頂上へ戻る途中で、分岐して9合目へダイレクトに下る道もあります。
長野県王滝村から、おんたけスキー場のある御岳高原に向けてぐいぐい上って行きます。道路はよく整備された2車線道路で、道中には無数の霊神碑が並び、御嶽教信者の修行の場である清滝や新滝の霊場があって、御嶽山が信仰の山であることを実感させられます。
銀河村キャンプ場、御岳自然休暇村、おんたけスキー場のある八海山を通り、森林帯のなかをぐねぐね高度を上げていくと、三笠山をぐるっと回り込んで。目の前に御嶽山がそびえる田の原駐車場に到着します。
田の原には観光センターと田の原山荘があって宿泊や食事ができます。
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