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中津川市の北端、加子母地区にそびえる小秀山(1982m)は、飛騨・美濃・木曽にまたがる阿寺山地の最高峰です。
山麓の下呂市竹原にはかつて源頼朝が建立させた天台密教の山岳寺院・鳳慈尾山大威徳寺があって鎌倉幕府から厚い崇敬を受け、小秀山には、大威徳寺が戦火にかかったとき、寺宝を隠したと伝わる鶏岩の埋蔵金伝説があります。
1900m級の標高にしては、アルペン的な山容が山麓からもよく目立ち、日本200名山にも選ばれています。登山口の乙女渓谷から二の谷登山道を上れば、数々の滝が連続して飽きさせません。
乙女渓谷→小秀山 4時間30分 / 小秀山→乙女渓谷 2時間 |
乙女渓谷キャンプ場から東本谷にかかる橋を渡ると、二の谷渓谷に立派な木の桟道が延びており、これを進みます。
二の谷は両側を険しい岩壁に囲まれた、狭くて暗い谷間ですが、そこに架かる芸術的な木の桟道沿いには、ねじれ滝や和合滝など幾つもの滝が連続し、初夏にはシャクナゲの花も見られて飽きさせません。
約1時間で狭い谷間が開けて、避難小屋を過ぎ、展望デッキがある滝見台から、はるかに岩壁を流れ落ちる2条の滝を遠望します。落差80mの夫婦滝です。不思議な形をした烏帽子岩なども見ることができます。
滝見台から木の桟道は谷間を離れて山の中腹を進み、夫婦滝のうち雄滝の真下にある展望デッキに出ます。80mの高さから目の前を流れ落ちる滝は見事です。
雄滝で整備された桟道は終り、本格的な登山道が始まります。雄滝の左側を高巻くように登り、滝の落ち口に上がります。ここから下を覗き込むことはできますが、かなり高度感があるため怖い場所です。
雄滝の上には桟橋の架かる子滝があり、苔むした岩がごろごろ積み重なった谷筋に沿っていくと上流に孫滝があって、ここから森林帯の斜面を登っていきます。
大きな一枚岩の鎧岩を左に回り込み、急な尾根筋をぐいぐい登ります。第一展望台、第二展望台、第三展望台の標識が出てきますが、いずれも樹林に囲まれて大した眺めは得られません。次にカモシカ渡りという高さ10mほどの垂直の壁を、両手両足を使い、木の根に掴まって乗り越えますが、ここが小秀山登山で最も厳しい難所です。
カモシカ渡りを越えると一旦道はなだらかになり、山頂部の兜岩を眺めながら三の谷登山道分岐に至ります。小秀山ではこのカモシカ渡りが危険なため、下山は平凡な樹林帯を行く三の谷コースを取るように決められています。
コースはまだまだ長く、兜岩ははるかに遠く感じます。やがて尾根に続く岩交じりの急坂が30分ほども続き、御嶽山の眺めが初めて出てくると、ようやく稜線上の兜岩に到着します。兜岩は山頂部に突き出た巨岩の重なりで、岩場の通過は見た目ほど危険ではありませんが慎重に通り抜けます。
この兜岩からは、御嶽山をはじめ、中央アルプス、恵那山、白山など360度の大パノラマが開けて、今までの辛い登りの疲れを癒してくれます。
ここからゆるい上り下りの笹原の稜線を、第一高原、第二高原、第三高原と名づけられた小広場を通って楽しい尾根歩きが続きます。
目の前にはゆったりとした小秀山が見え、最後のひと登りをがんばると完成したばかりで木の香も新しい避難小屋の秀峰舎を経て、笹原に囲まれた小秀山の山頂に到着します。山頂の真正面にはどーんと大きな御嶽山がそびえています。
復路は三の谷登山道を取りますが、樹林帯の急斜面をひたすらジグザグに下りる退屈で辛い道のりで、東本谷の林道に出たあとは、2kmの林道歩きを経て乙女渓谷キャンプ場に戻ります。
小秀山の山頂手前に建つ無人小屋です。
中津川市が設置し、地元の登山道整備ボランティア・かしもスカイウォーカーズが管理する小屋は、木の香も新しい素敵なところで、ここに泊まって御嶽山を朝夕眺めていたい、と思わせます。実際の宿泊には、水の持参が必要です。
特に、清潔に保たれたバイオトイレは、ここが山頂の無人小屋とは信じられない設備です。大切に利用しましょう。
国道257号線の中津川市加子母地区・小郷集落から山間に入る道を取り、登山口の乙女渓谷キャンプ場に車を止めて出発します。シーズン中は込み合うため、500円の駐車料金が必要です。
小秀山は、御嶽山の地獄谷噴火口を真正面に望む展望の山ですが、この小秀山も実は火山であったと最近判明しました。東本谷源流部には知られざる噴火口地形が顕著に残っているようです。
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