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位山(1529m)は飛騨の中央に位置し、太平洋と日本海の分水嶺をなす山で、特に宮川の水源として古くから飛騨の人々の崇拝の対象となってきました。ゆったりとした丸い山容はどこから見ても穏やかです。頂上は飛騨一宮水無神社の奥宮です。
位山は1500mを越える標高がありながら、林道を使ってダナ平から登れば、比較的短時間で山頂に立つことができます。
しかし、山頂からの展望が利かないのがいまひとつ不満です。そこで、隣あわせに並んで、飛騨随一の展望の山として知られる川上岳(1626m)への縦走路「天空遊歩道」のトレッキングコースと合わせてご紹介します。
位山の最短ルートはダナ平林道終点からのものです。北アルプスの山並みを一望するダナ平駐車場には、水無神社奥宮の鳥居と並んで和洋折衷の奇怪な太陽神殿があります。これは、位山にインスピレーションを得た宗教家が建てたらしく、歴史があるものではありません。
なお、北アルプスの眺めは、ここから先の樹林帯に囲まれた登山道と山頂一帯にはありません。また、御嶽山もスキー場から先では望めません。
神殿の脇を抜けて登山道に入り、針葉樹とダケカンバの森に巨岩が点在する急斜面をジグザグに登ります。結構急坂ですが、標高1300mのダナ平と頂上の標高差はわずか200m、しばらくすると稜線に辿りつき、ほとんど起伏のない高原状になります。
やがて「天の岩戸」と名づけられた巨岩が鎮座する場所につき、スキー場からの登山道と合流します。
森閑とした針葉樹林の湿地帯を行くと、やがて庭園風のドウダンツツジに囲まれた気持ちのいい道に変わります。切り開きのある広場が現れますが、展望は効きません。 さらにドウダンツツジの森を抜けて行きます。
川上岳への天空遊歩道と分岐して300mほど進むと平坦な頂上に到着しますが、樹林帯に囲まれて展望も開けず、休憩もさきほどの広場まで戻ることになります。
位山はどこから見てもなだらかな山容をしていて、頂上一帯もどこが最高地点か分かりにくい感じです。南へ少し行くと、位山の源流水が湧き出す天命水があります。
帰りはもと来た道を辿りますが、「天の岩戸」の辺りは分岐が分りにくく、そのまま直進してしまうとスキー場に出てしまうため注意が必要です。
位山→2時間30分→川上岳/川上岳→2時間30分→位山 |
飛騨のほぼ中央に位置し、太平洋と日本海の分水嶺をなす位山と川上岳を結ぶ稜線には、天空遊歩道という縦走路が作られています。天空遊歩道の名が示すとおり、標高1500m前後、笹原やブナ林が続く明るい尾根道で、御嶽山や白山の眺めが素晴らしいルートですが、片道約8kmのロングトレイルでもあります。
アプローチの悪さから、車が1台しかない場合は位山あるいは川上岳から16kmの往復縦走になります。その長さゆえ、あまり紹介されていませんが、早朝に出発して歩き通すだけの価値は十分にあります。
熊除けの鈴などを鳴らしながら行きましょう。
位山山頂の手前にある分岐から川上岳に向って歩き始めます。
庭園風のドウダンツツジに囲まれたゆるやかな道を下って行くと、イチイの森に入り、やがて笹原の稜線が続く先に、川上岳の丸い山容が遠く見えています。道はきれいに刈り込みされた笹原を抜けて行きますが、刈られた笹がとにかく滑りやすいので、下り道の際には注意が必要です。
やがて、後方に御嶽山が現れ、剣岳から笠ヶ岳、槍ヶ岳までの北アルプスの眺めも開けてきます。
平らな位山山頂がだんだん遠くなり、気持ちのいいブナ林に囲まれた大小7つのピークを上り下りします。それほどの急坂はありませんが、帰りも同じ道を辿ることを思うとちょっとうんざりします。
川上岳が近づき、南には萩原方面の人里が見えています。川上岳から南に伸びる山脈には、標高1510mの高城山がピラミタルな三角錐の山容を見せています。高城山は見た目も素晴らしいながら知る人が少ない不遇の名峰です。
2つめの標識を過ぎて大きく下ると標高1440mの最低鞍部、大きく上り返してブナ林から針葉樹林に変わると、やがて宮のツベタ林道から天然記念物の大ネズコを経て上がってきた登山道と合流します。
川上岳へはあと2km、坦々と登っていくと尾根は広い高原状になり、植生も人の背ほどもあるクマザサから、低いチシマザサに変って擬似高山帯のような開けた山頂部に到着します。
チシマザサの草原に囲まれた川上岳の山頂からは、御嶽山、北アルプス、白山と視界を遮るもののない360°の大パノラマが展開します。帰りもまた長い道のりです。
位山(1529m)は飛騨の中央に位置し、太平洋と日本海の分水嶺をなす山で、特に宮川の水源として古くから飛騨の人々の崇拝の対象となってきました。ゆったりとした丸い山容はどこから見ても穏やかです。頂上は飛騨一宮水無神社の奥宮です。
最近では位山は、飛騨有数のパワースポットとして注目されるようになりました。
これまでも、位山の山中に点在する巨石群が古代遺跡だと言われたり、UFOの目撃が多いと噂されたり、世紀の偽書「竹内文書」で超古代世界の中心・日玉国だと語られて、その方面の好事家にとっては「聖地」のような扱いを受けてきました。
風琳堂氏のサイト「東北伝説」の円空情報館によれば、室町時代に飛騨国司・姉小路基綱が書いた「飛騨八所和歌集」の裏書には、不思議な記述があるといいます。
「此山を位山といふこと、神武天皇へ王位たもち玉ふへき事を此の山の主とて、身ひとつにておもてふたつおのおの足手あるなるか、名は両面四手といふ、雲の波をわけ、あまつ船に乗りてきたり、此山にして其事をさすけたまひしより、くらゐやまといへり、其船を乗りとめし所をふな山とて位山のつゝきてあり。」
両面宿儺伝説としては最古のもので、天津船で船山に降り立ち、「両面四手」の神が神武天皇に「王位」を授けたとされています。いかにも超古代文明説を彷彿とさせますが、実は「日本書紀」の神武神話には、神武東征より先に大和へ「天磐船」に乗ってやってきた「櫛玉饒速日命」という先住神がありました。
この「櫛玉饒速日命」は、飛騨と縁の深い物部氏の遠祖でもあります。
両面宿儺伝承とは、大和における先住太陽神を飛騨の先住民族に投影させたものなのでしょう。
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