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川上岳(1626m)は位山三山の中で最も奥に位置し、標高も高い山です。ゆったりした草原状の笹原が広がる山頂からは、御嶽山、北アルプス、白山と、まさに360°の大パノラマが展開します。
ルートはいくつかありますが、いずれも長い林道歩きを強いられます。唯一下呂市萩原町の山之口から入る林道は登山口ゲートの近くまで車で入れるため、メインルートになっています。
登山口→2時間30分→山頂/山頂→1時間30分→登山口 |
高台に森林管理署の小屋がある登山口から、すぐに大足谷をアルミ製の簡易橋で渡ります。時期によっては橋がない場合もあり、岩を伝って谷を渡ることになります。
それからは植林帯の息をもつかせぬ急登が始まります。展望も風もないジグザグ道を行く、川上岳のがまんのしどころです。ところどころに表示板があり、「ここまでようござった。山頂はまだまだとおーい。引き返すならここ」といった、挑発的な文句に闘志をかきたてられながら登ります。
周囲が明るくなり、雑木林の間から背後に御嶽山の眺めが見え出すと標高1400m点。ようやくなだらかな道に変わり、大足谷をはさんで川上岳の大きな草原ドームがそびえています。手を伸ばせば届きそうな距離ですが、頂上まではまだまだ遠く、明るい雰囲気の尾根道を辿り、ブナ林を抜け、大足谷を大きく回り込みます。
その水源地は岩間から湧き出すいくつもの小渓流を渡る楽しい場所で、ここを過ぎればいよいよ山頂部への急登がはじまります。太陽が照りつける笹原を、ドーム目指して登ります。
着いた場所は馬瀬道との分岐。目標の山頂はまだかなたにあります。偽ピークを越えて宮からの登山道を分岐し、ナナカマドの潅木と笹原の山道を辿ると、ようやく川上岳の頂上に出ます。ゆったりした草原状の笹原が広がる山頂からは、御嶽山、北アルプス、白山と360°の大パノラマが展開します。
下呂市萩原町から県道宮萩原線で山之口地区へ。公民館前で位山峠を経て高山市方面への県道と分かれ、民宿位山荘の前の林道を直進します。この林道は登山口ゲートの近くまで車で入れるため、メインルートになっていますが、相当に道路状況が荒れているため、慎重な運転が必要です。
また、森林管理署のゲート前にある駐車スペースも狭いので、他の登山者と譲り合って車を止めましょう。
神代の昔、飛騨の中央の位山と、船山、川上岳にはそれぞれ神様がござった。
位山は力強い男神様、その東隣と西隣の船山、川上岳は美しい女神様やった。2人の女神様は、それぞれ位山の男神様に結婚を申し込んだのやけど、どちらとも決めがたく、男神様は困ってまった。
そこで、男神様は2人の女神様に提案したんやと。「満月の晩、月が位山の上にかかったのを合図に、私のところへ来てくれた方をお嫁さんにしましょう」2人の女神様はたいそう張り切った。
満月の晩、東側の船山では早々に月が昇るのが見えた。船山の女神様はさっそく化粧を始めたが、なかなか位山に向かっていかん。いらいらしながら待ってござったと。 一方、西の川上岳からは、位山が邪魔してなかなか月が見えなんだ。そわそわしておると、ぽっかり昇ったばかりの月がもう位山の上にかかったように見えたもんで、慌てて男神様の元へ走って行った。
船山の女神様が待ちくたびれておった頃、位山では男神様と川上岳の女神様が手と手を取り合っておったんやさ。悔しがった船山の女神様は、位山との間に無数河川の谷を作って行き来を絶ってしまわれた。
位山と川上岳は仲良く肩を並べ、子どもがたくさん生まれた。満月の晩、川上岳を見ると頂上の草原で、神様の子どもが遊ぶ様子が、うさぎが跳ねているように見えたもんで、里では「うさぎのばんばん(馬場)」と呼んだという。
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