Panorama飛騨 飛騨路と北アルプスの絶景地ガイド

 
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天生湿原と籾糠山トレッキング


 飛騨市河合町と白川村荻町を結ぶ天生峠は標高1290m、ヘアピンカーブが連続する国道360号線が通りますが、山は険しく、谷は深く、道路のすぐ脇を絶壁から滝が流れ落ちる秘境で、1年のうち大半が積雪か災害通行止めという酷道です。
 しかし、峠の頂上から南へ続くブナ原生林の稜線は意外に広く、飛騨市宮川町にあるニコイ高原池ヶ原湿原と並んで飛騨の2大高層湿原と称される天生湿原があります。
天生県立自然公園一帯では雪解けあとの水芭蕉から初夏の高山植物、秋の紅葉まで四季折々の植生が楽しめ、何度訪れても飽きさせません。
 さらに、標高1744mの籾糠山の山頂へ上れば、北アルプス連峰から御嶽山までの素晴らしいパノラマが展開します。

天生湿原へ

登山口→天生湿原 約40分 / 天生湿原→登山口 約30分

 天生峠の頂上登山口には、2段になった広い駐車場があります。ここから上部には、トイレの設備がありません。ここで済ませておきましょう。
 登山口には登山指導所のテントがあって、500円の清掃協力費と引き換えに地図の入ったパンフレットをもらえます。支払いは任意ですが、飛騨の秘境と呼ばれる天生湿原を守る地元の人たちに敬意を表して協力したいものです。
 環境省の中部北陸自然歩道に指定された登山道は道幅も広く、踏みしめる土道も足にやさしい歩きやすい道です。雑木林に延びる小さなアップダウンの道を1kmほどで、谷を越えて目の前に広い空間が広がります。天生湿原です。
 西コースと東コースに分かれた木道が湿原を一周しており、ブナの森の中にそこだけ明るく開けた平地は、まるで別天地のようです。春には水芭蕉、初夏にはニッコウキスゲ、ワタスゲなどの高山植物が湿原を彩り、楽しみは尽きません。


 湿原の中央には針葉樹の茂った小島があり、木道が延びています。この島は匠屋敷といい、飛騨の匠の元祖と呼ばれる止利仏師が住んだ屋敷跡との伝承があります。
 聖徳太子の命を受けて、天生の山に都城建設用の森林伐採に来た渡来人と、月ヶ瀬村の久良女との間に生まれた止利は、その出生や鳥に似た風貌から、大きくなると山奥深い天生峠に移り住みました。止利の木工技術は天才的だったので、木で作った人形は動いて一日で田を耕して苗を植え、一晩で稲が実って収穫した、と伝わります。
その脱穀の際に風に飛ばされた籾殻が積もったのが、これから目指す籾糠山です。

天生湿原から籾糠山へ

天生湿原→籾糠山 約1時間30分 / 籾糠山→天生湿原 約1時間

 湿原の北端から一旦谷に下ります。カツラの巨木が点在する明るく開けた谷間はカラ谷といい、谷を渡った場所で道は二手に分かれます。東の斜面に上っていく道は木平湿原を経由する道で、正面がカラ谷沿いに上る道です。
 正面の道はまた二手に分かれ、西に向かう道はブナの巨木が茂る尾根を上る道、いずれも籾糠山の手前で合流します。木平経由のアップダウンが大きいので、上りにカラ谷かブナ尾根の道をとり、下りで木平湿原を訪ねるといいでしょう。


 カラ谷には見事なカツラの巨木が茂り、まるで幻想的な門のようにそびえています。
トトロの世界が広がる谷沿いを詰めると、木平から下りてきた道と合流し、西へ向かって急な階段が続きます。明るいダケカンバ林の急な道を上り詰めると、針葉樹林に囲まれた静かな稜線に出ます。
 ベンチのある休憩場所で、ブナ尾根からの道と合流して、南にピラミッド形の山頂を見せる籾糠山へ向かいます。


 小ピークを越えると大きなダケカンバの木があり、そこから息をもつかせぬ急登が100m続きます。道沿いにはベンチのある休憩場所が何箇所もありますが、山頂が手狭なため、登山者が多い場合の昼食場所として設けられているものです。
 針葉樹の尾根道をひと登りで、岩の点在する山頂に到着します。展望は一気に開け、東側に立山、剣岳から薬師岳、槍ヶ岳から穂高連峰、乗鞍岳、御嶽山に至る山並みが見えています。西にある白山は距離的には近いのですが、ちょうど隣の猿ヶ馬場山に隠れて見えません。
 その猿ヶ馬場山への稜線は熊の生息地でもあり、生態系保護の観点から登山道が設けてなく、一面の笹原になっています。眺めを楽しんだら、木平に向かいましょう。


 急降下したカラ谷との分岐から白樺林を上り返すのはつらいですが、やがて笹原にダケカンバの巨木が立つ平原に出て、しばらく潅木帯をゆるゆると進むと、池の点在する木平湿原が現れます。
 天生湿原よりも小さめですが、人も少なく味わいのある湿原です。やがて、ブナの森の中をどんどん下っていくと、樹間から天生湿原が見え出し、カラ谷へ出て他の登山コースと合流します。天生湿原と籾糠山は人気のある場所ですが、熊の生息地であるだけに、熊除けの鈴などを鳴らしながら行きましょう。


登山口へのアクセス

 天生峠へのアクセスは飛騨市河合町と白川村の2方向からありますが、東海北陸自動車道からのアクセスは圧倒的に白川郷IC経由が便利です。
 荻町合掌集落に入る交差点手前の三叉路から山道に入り、城山展望台への道を分けてヘアピンカーブの連続する山道をぐいぐい登ります。国道脇に天生中滝が落ち、背景には大きく白山の姿が見えていますが、車を止める待避所も少なく、対向車もあるのでゆっくりできません。特に紅葉の時期は峠道に慣れない車が多く、部分的に渋滞が発生することがありますので、運転は十分注意しましょう。

 飛騨市からは、国道41号線の数河峠入口から分岐してJR角川駅前を経由し、小鳥川沿いの国道360号線を走ります。小学校跡のある元田集落で小鳥ダムへの県道を分けますが、一段上がった月ヶ瀬集落に迷い込むと天生峠に行けません。
 一辺の平地もない急斜面に刻まれたヘアピンカーブの国道を、エンジンもあえぎながら高度を稼いでいきます。対向車とすれ違い可能な道路幅がありますが、カーブの先が見通せない場所が多いだけに、運転は慎重にしましょう。
送電線の鉄塔群が近づき、傾斜がゆるやかになると、山頂部に高原状の丘陵が続き、白川村境の天生峠駐車場に到着します。


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